なんか、凄いなあ。改めて中田ヤスタカの才能を確認した感じ。
「capsuleみたいじゃん」という意見は有るだろう。アタシはそれを否定しないし、そうなって当然だと思うし、それでいいやって感じている。
この際、異母兄弟(姉妹か?)でも良いよ。だって、全くの同一人物が作詞作曲から編曲、トラックメイク、さらにマスタリングまでやっているんだからね。中田にとってcapsuleは研究室で、Perfumeは研究結果に基づいて実証実験を行う場所なのではないか? そう考えると、FLASH BACKの発展系がGAMEなのではないかと思えてくる。
アタシはcapsuleとの住み分けとか差別化には特に興味が無い。
「中田はPerfumeをどうしたいのか、Perfumeで何をやりたいのか」
そんな明確な意思が伝わって来ればそれで良い。ただ、「Perfume + 中田の楽曲 = 1」では納得しないね。Perfumeの個性と中田の才能がぶつかり合い化学反応を起こす「1 + 1 = 3」を楽しみにしている。
今回のアルバムを聴いて感じたことだが、「エッジが効いてる」とか「バッキバキ」とか「すげーカッケー」とかそんな先鋭的な音を前にして、Perfumeの3人の声がそれら全ての尖った音を中和してなんともいえない空気感を醸し出しているところがなんとも言えず気持ちいい。ってか痛快ですらある。これは紛れも無くPerfumeの魅力の一端。たぶん、でんぷんを糖に変えているんじゃないかな。で、リスナーは知らず知らずのうちにその糖を脳内でアルコールに変えているんだろう。きっとそうだ。
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01. ポリリズム
これは、もはやプログレッシブ・ハウスと言い切っても良いかも。ポリループ部分にこそ「何か変な曲で歌い踊る3人組」としてのアイデンティティが在ると思うので、テレビの歌番組でもやって欲しいのにな。
02. plastic smile
YMOの時代から受け継がれる日本の御家芸とも言える伝統芸能「テクノポップ」の流れを汲む作品。かわいい。
03. GAME
セカイ系はエレワーで終わった。でも、「彼女たちが10代のうちに、もう一度エレワーみたいなマイナーコードのエレクトロなロックを聴きたい。なんならcapsuleの"Starry Sky"のカバーでも良いぞ」って、monch71さんの所でコメントした記憶がある。
10代の狂気と衝動と不安、根拠の無い無敵感、そして無力感。そんなしょっぱくて、すっぱくて、甘いイメエジを凝縮した「戦闘モードに入るための歌」を10代の最後にやって欲しかったのね。この曲はそんなアタシの妄想に近かったのでかなり震えた。
ボーカルが前に迫り出していないところがアルバム収録曲っぽい。フロアを意識したのか? この曲をシングルカットしたら賛否両論の大騒動になるだろうが、間違いなくアイドルポップの歴史が変わると思う。
会長!御英断を。
04. Baby cruising Love
GAMEの後に聴くと戦闘モードに高まった気持ちが急に現実に引き戻されるんだが。この曲順で良かったのだろうか? まだ慣れないなあ。
でも改めて聴くと、トラックの完成度の高さに驚く。「中田は足し算しか出来ないと思っていたら引き算も出来るじゃん」な印象は変わらない。
05. チョコレイト・ディスコ
初めて聴いた時に「うわあー、スゲー。こんな曲がアイドルポップとして成り立っているなんて」と感じたな。でもこのアルバムに収録されると至って普通に聴こえてしまう。もはやこの曲で違和感を感じることもなくなったんだなあ。こんな楽曲が巷に溢れるようになると楽しい。
06. マカロニ
単品で聴くと良いカンジの曲なんだけど、アルバムのこの位置に入るとインタールードな曲になってしまうなあ。
ちなみに個人別PVはまだあ~ちゃんしか観ていない。
07. セラミックガール
思いっきりエッジの効いたトラックなんだけど、メロディーセンスと3人の歌声だけでこんなにもキュートなナンバーになるでしょ。キラッキラな音が散りばめてある訳でも無いのにめっさ可愛いし。アイドルポップとして秀逸。シングルカットすると売れると思う。
08. Take me Take me
アルバムだから出来るインタールードなナンバー。テックハウスなのか? 気持ちいいね。思わず持ちネタが増えて得した気分。
09. シークレットシークレット
キラーチューン。マイナーコードの「切ない系」エレクトロハウス。キラキラで目が眩むゴージャスなトラック。スウィートネスなウワモノとブリブリベースがPerfumeのサウンドカラーであることを決定付けたナンバーだと思う。是非この路線を推し進めて欲しい。
10. Butterfly
ハウス親父が大絶賛!!! 待ってたよ。以前のエントリで、アイドルポップの側からピークタイムアンセムとしてフロアで流せるような曲が出てきて欲しいって書いたけど、この曲を聴いた時に「コレだ!」と思った。背筋がゾクゾクっとして震えが止まらなかったよ。空間の広がりを感じさせるウワモノと3人のコーラスが効果的に重なって奥行きを感じさせ、トライバルなリズムトラックが疾走感を高めるプログレッシブハウス。さらにラテンフレイバー溢れるベースラインのおかげでディープハウス方面でも行けそう。名曲。是非、日本全国いや世界中のDJにお奨めしたい。ちなみに現在のもちネタで合わせられそうなものはこちら(*1)
ただね、DS用ゲームソフトとタイアップのおかげで「ゲームの曲」という先入観をもたれてしまう懸念もある。有り難いはずのタイアップが足かせになる可能性。このゲームのパッケージ画像に映る御姉ちゃんの爆乳っぷりにドン引きしたし。
11. Twinkle Snow Powdery Snow
良い曲なんだけどね。楽曲として大好きなんだけどね。 Butterflyのボディにボリューム感があるので、余計にこの曲が薄っぺらな感じに聞こえるんだよね。以前のエントリで「音がソリッド過ぎて中音域の下の方がそっくり欠落している」って印象は変わらず。ってか、リマスタリングして曲の質感を統一して欲しかったなあ。コレはこのアルバムの唯一残念な部分。
12. Puppy love
なかなかいいね、ツンデレーション。イントロを聴いた瞬間にコレを思い出した。思い出したら妄想が止まらなくなり、いっそのことBaseBallBearにトラックを演奏してもらってギターポップなPerfumeもアリかなって思った。次回作はそんなコラボレーションが有ったりすると楽しいかもね。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
アタシがPerfumeを聴いている理由は「愛してしまったから」だけど、そのきっかけは「何か変な曲で歌い踊る3人組」に出逢ったからだ。テクノ、ハウス、エレクトロなど「全くもって不健康極まりない環境が育んだ不良音楽」を可愛らしい3人組アイドルが歌って踊るんだよ。その違和感が面白かったし、自分が大好きな「コッチ側」の音楽をやっているアイドルの存在には強烈なカルチャーショックを受けたんだ。
このアルバムがデイリー1位に輝き、ウィークリーでも10位内は堅いと思われている状況。これは、最近テレビで話題をさらっている「暴走トーク」が受けているのか、苦節8年の苦労話が涙を誘うのか、それとも新しモノ好きが飛び付いているのか、はたまたアタシみたいな音楽ヲタが注目をしているのか。まあ、それら全てだろうが、先鋭的な音楽をやっているのに謙虚で天真爛漫で至って真面目な3人組を無視出来なくなって来たのだろうね。それは紛れも無く3人の持つ魅力だな。しかし、「大好きなスウィーツ」より「普段聴く音楽」の方が気になるアイドルがかつて居ただろうか
今、日本は面白い方向に向かおうとしている。だって、本来はアンダーグラウンドな存在だった先鋭的な不良音楽がチャートを席巻しているんだよ。ロックンロールが社会的に認められるようになった歴史と同じようなストーリーが、3人組アイドルを主人公にして繰り返されるのだろうか?
これが美山花さんの言う「4.16Perfumeの変革」なのか。
(BGM 「Butterfly」 : Perfume)
追記:
冒頭の「中田のPerfumeに対する明確な意思」が伝わって来たかと問われると、うーん。
単純に「Perfumeの今」を表現したかっただけかな。今回のアルバムのどの曲を聴いても「ハタチ前の女の子」って感じがするし。
音そのものがカッコ良いかと言われるとそれは別の話。純粋なテクノ・ハウス・エレクトロを見ればもっとクールでカッコいいトラックなんて山ほどあるし。しかし「アイドルポップとして成立しているか」で見てみると高い次元で絶妙なバランスを保っていると思うよ。
評判のよろしくないタイトル曲だけど、あれだけハードで可愛げの無いトラックなのに、Perfumeの歌声が全く前に迫り出していないのに、3人の声がなんとなく聴こえてくるだけでPerfumeとして成立しているじゃん。この曲で3人のそれぞれの歌声が認識できるかどうかは重要ではなくて、もはや符号化された「音声」であっても代替不可能なPerfumeとしての人格を持っているって事を中田は実証したいんだよ。アタシは拍手を贈りたい。
だって、アルバム全体を通したテーマって「ツンデレーション」なんだもんw
注釈:
(*1)トライバルな雰囲気を持ったプログレッシブ系を中心にいろいろとお試し中ですが、とりあえず今のところこんな感じかな。 参考までに。
Gjeloshaj 1862(Santiago Salazar Mix ) :Santiago Salazar & DJ 3000
Precious : Andrew Bennett & Rico Suarez
The Distance (Delta Rock Duo Rmx) : Rio Addicts
I Want your Love /Vocal Duke Rmx : Gutterstylz
Riliz The Pressure (Fauvrelle Rmx ) : Carlos Fauvrelle
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困った事にPerfume成分が多目です。彼女達の親御さんとは間違いなく同世代です。ちなみにP.T.A.会員です。
ホントに御免なさい。
御用命は「lstd_rd の yahoo.co.jp」まで。