「宇多丸×掟 25000字対談」を読みました。アイドルヲタのこゆいオッサン2人の濃密な対談は読み応えがありました。Perfumeへの愛に溢れる実に素晴らしい内容でした。PerfumeファンのtumblrではQuote祭り状態になっていますね。
それにしても掟ポルシェの受け答えが、あのキャラからして以外にも常識人だったので、なんか掟に対しての認識が、俺の中で変わった。これまでキワモノ的な見方しか出来なかった事を謝りたい。申し訳ないと。
今回のエントリでは、そんな掟ポルシェの対談内容から引用する形で、今ネット上でPerfumeに対して投げかけられる様々な否定的意見やツッコミに対して、回答を試みてみたいと思う。
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「ボーカルにエフェクト掛かっているやん。あれじゃ誰が歌っても一緒なんじゃないの?」と言う意見を良く聞きます。先ず、この件について掟氏はどのように答えてくれるでしょうか?
掟 Perfumeのボーカルって、AUTO TUNEっていうパソコンの録音ソフトの機能を使ってるんですよ。本来ズレた歌の音程を補正するための機能なんですが、それを過剰にかけると歌声がロボットが歌ってるように震えます。だれが歌っても同じに聞こえそうなもんですけど、実際にはそうじゃなくて、やっぱり地声の魅力という部分は最終的に残るんですよね。それが亜流みたいなものが出てきたときに、ちょっとわかった。
宇多丸×掟対談【第5章 魅力】 http://blog.yomiuri.co.jp/popstyle/2007/10/post_e3cb.html
エフェクトが掛かったボーカルが受け入れられないと言う人は、おそらく「記号化されて代替が可能なアイドルなんて愛せないし、そもそもそんなのアイドルじゃない」と言うことなのでしょう。その気持ちは判ります。存在を特定できない相手を擬似恋愛の対象には出来ません。(*1)
確かに、メジャー以降のエレクトロ色が強い楽曲に関しては、そのエフェクトが掛かったボーカルトラックの印象により「あ~ちゃん、かしゆか、のっち」ではなく「Perfumeの中の人」が演っていると思われても仕方ない部分があるかも知れません。しかし、ファン暦の浅い私でも、~Complete Best~を繰り返し聞いたり、ニコニコ動画やYouTubeでライブ映像やトークなどの3人の動画を見たりしているうちに彼女達の声の判別が出来るようになりました。その結果、ボーカルエフェクトが地声の部分を壊していない事に気付いたし、エフェクトが単なる世界観の演出に過ない事が解りました。楽曲の中の3人の声から、彼女達それぞれの歌う姿を想像出来るようになった時、私の中であの3人組が「Perfumeの中の人」ではなく「あ~ちゃん、かしゆか、のっち」になりました。こうなると代替は不可能だ。っていうかありえない。(*2)
でも、これってPerfumeの楽曲に興味を持ってから早い段階でファンになったからこそ理解できた事なんですね。そもそも好きにならなかったら同じ楽曲を何十回と聴いていないでしょう。
掟 ボーカルのかわいさを売りにするのが、ある意味アイドルビジネスの本懐ともいえるじゃないですか。だけど、声にオートチューンかけて思い切りよく変調させちゃう。「ポリリズム」に至っては、サンプリングのような形でカットアップして聞かせてるっていう。反則だらけなんだけど、そこがまた痛快で。
宇多丸×掟対談【第7章 サウンド】 http://blog.yomiuri.co.jp/popstyle/2007/10/post_2b84.html
最初聴いた時、その「アイドルポップなのになんでエフェクトが掛かっているの?」と言う部分は正直違和感がありました。自分の基準で描いていた従来のアイドルポップ像からかけ離れていたためです。逆にその部分こそがPerfumeに興味を持ったきっかけでもありました。「アイドルポップにオートチューンってどういうつもりだ?」ってね。
「アイドルなのに」っていう意外性というか「なんか変だぞ」っていう部分が面白いし、その部分を楽しんでいる人も大勢居るはずです。
掟 逆にね、例えば「Perfumeの音楽はクラブミュージックだ」と限定して売ってしまっていたとしたら、一般層が受け入れるのがけっこう大変だったりするもんですよ。オシャレなものをそのまま受け入れるのはスノッブな人間のやることだという思い込みがあるから、「オシャレでない俺がこんなオシャレなものを聴いていいんだろうか」みたいな状態も生まれる。だから、アイドルであることが、オシャレを薄めるための材料にもなっている。
宇多丸×掟対談【第5章 魅力】 http://blog.yomiuri.co.jp/popstyle/2007/10/post_e3cb.html
ただ、ボーカルにエフェクトを掛けてしまう手法自体が、掟氏が言う「クラブミュージックだと限定」しているとも言えるのですが、どうでしょう。つまり、メジャー以降に関して言えば、Perfumeの楽曲の最大の特徴である「ボーカルエフェクト」を受け入れられるかどうかと言う所が、想像以上にPerfumeの世界へ繋がる扉の間口を狭くしていたのかも知れません。Perfumeは「生声至上主義」の人にとっては受け入れ難い存在であるのでしょう。そんな人達に対して「恫喝まがいなまでのプロパガンダ(*3)」はいけませんね。
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続いて「なんかさ、ルックス微妙じゃね? なんでそんな子達に熱上げてんの?」という意見もありますが、どうでしょう。
掟 単純な性欲の対象にしたいなら、今時アイドルである必要はないわけですよ。だからアイドルの歌も別に性を想起させなくていいし、その方が間口が広い。
宇多丸×掟対談【第6章 非擬似恋愛対象】 http://blog.yomiuri.co.jp/popstyle/2007/10/post_1265.html
掟 女の子とのコミュニケーションのスタイルがすごく分化されてったひとつの結果なんでしょうね。例えばAVを見れば性欲が満たされる。グラビアアイドルみたいなものを見れば、かわいい女の子を見たいという欲求が満たされる。だけど、アイドルソングを聴くという上でどんな欲求を満たせばいいんだろうというのが、多分みんな見えてなかったと思うんです。それをやっと形にしてあげたというか。アイドルにまとわりついていた余計な要素を取り払ったあとで残ったものというんですかね、最終的に。それがPerfumeなんじゃないかなって気がしますね。
宇多丸×掟対談【第8章 奇跡】 http://blog.yomiuri.co.jp/popstyle/2007/10/post_3e50.html
ルックスに関しては、「そりゃあ趣味の問題っしょ」と言うしか有りませんね。確かにもっと可愛くて綺麗な女の子は沢山居ます。もっとも、私くらいの年齢になると、Perfumeの年代の女の子達は、ほぼ例外なく皆さんとても可愛らしく見えますけどね。ええ、とてもキラキラ眩しいです。狂おしいほどに。
可愛くて綺麗な女の子の3人組が見たければPabo(*4)を観ましょう。私はこの3人はその特異なキャラも含めて大好きです。Perfumeよりもフォトジェニックで目の保養になるでしょう。でも、それだけなんですよね。
たとえば、2chの某スレでは樫野さんの制コレ時代の水着写真が黒歴史として扱われていますね。本来、アイドルの水着写真なんてモノはお宝画像として重宝されるべき存在だと思うのですが、Perfumeの場合は何故触れてはいけない過去なのでしょうか? これはファン自身がPerfumeを性的な対象として扱う事に拒否反応を示していると言う事なのではないでしょうか。 ファンはそういった性的なものとは違う、何か別なものを求めているのかもしれません。(*5)
私はPerfumeファン初心者として、彼女達に何を求めているのだろう。
3人が醸し出す「磁場」から発せられる「この上ない多幸感」でしょうか。
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最後に「なんで口パクなの?」という意見も良く聞きます。これについては今回の宇多丸×掟対談では特に触れられていないため、私自身の分析で回答を試みたいと思います。
中田ヤスタカ氏は「Remix」誌のインタビューで「楽曲の再現性は全く考慮していない」的な発言をしています。Perfumeのライブパフォーマンスに於いて、「楽曲の世界観を忠実に再現するには」という課題はスタッフサイドでも相当論じられた事でしょう。ニコニコ動画にアップされていた「リニアモーターガール」の初期のライブ映像(http://www.nicovideo.jp/watch/sm968004)を見るとよくわかります。生声だけでは無理が有り過ぎるのですね。これはボーカリストとしてのスキル以前に、単純に体力の問題かもしれません。「感情の起伏を抑えてクールかつ無機質に歌う」事が楽曲の世界観を演出するための第一条件なのに、激しい動きを要求されるダンスも同時にこなさなければならないのですから、完璧に演じるにはアスリート並みの心肺能力が必要になるでしょう。「肉体的な苦しさ=生身の人間の息遣い」であるため、激しいダンスの間でもブレスを入れてはならないし、息を切らせてはならないし、僅かなピッチのブレも許されない。これはかなり大変です。歌を完璧にこなすにはダンスパフォーマンスを犠牲にしなければならないし、それではPerfumeの魅力が大幅に損なわれる事になってしまう。それを解決する手段として最良の選択がリップシンク(口パク)だったと思われます。ただ100%口パクではなく、軽く生歌を被せている場合もありますね。
さて、Perfumeファンならライブに於いて「一部、生歌で歌われる楽曲もある」事は周知の事実です。「Perfumeのライブへ行くと生歌を聴けるよ」と言うことですね。これは「BEAT CRUSADERSのライブへ行くとメンバーの素顔が見れる(*6)」と同じです。ライブでの特典、つまりファンサーヴィスが有るという、実に戦略として有効な作戦とも言えるのではないでしょうか。
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さて、以上、「Perfumeと掟と俺」というエントリでした。
察しの良いPerfumeファンならお気付きですね。今回のワンマンツアーに於けるダンスパフォーマンスのタイトル「Perfumeの掟」のパクリです。ライブ会場へ行く事が出来ない淋しさを紛らわしているだけです。痛いですね。
さて、私の「Perfumeの掟」は何だろう? 「四の五の言わずに楽しめ」かな。
(本日のBGM :「エイリアンズ」:キリンジ)
注釈:
(*1) あれ? そうとも言い切れない気もする。存在のハッキリしない対象に妄想だけで恋は出来そうだ。プロの妄想家とはそういうもんだ。
(*2) Perfumeとしては過去にメンバーチェンジが行われているのでユニットとしては代替可能なのかもしれないが、今のメンバーに固定されてからは、やっぱ、あの「3人合わせてPerfume」なのである。三位一体ね。
樫野・大本・西脇でなければ、あの空気は出せんだろう。
(*3) 「嫌いだ」って言う人に無理強いすると「キモイ」「ウザイ」になるからね。一般人は真似しない方が良い。
(*4) ゴメン。グラビアアイドルというジャンルも最近は良く解らない。木下優樹菜のキャラが好きなので例として挙げてみただけです。
(*5) 宇多丸×掟対談で言われているような「アイドルとしての進化形」がそこに有るのでしょうか? 昔を良く知る古参の皆さんに思いを窺いたいですね。
(*6) あんた達、映像編集する人の身になって行動しなさい(笑)。pinksunさんには「B U P P A N !!」でビークル風Perfume面を作っていただきたい。
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困った事にPerfume成分が多目です。彼女達の親御さんとは間違いなく同世代です。ちなみにP.T.A.会員です。
ホントに御免なさい。
御用命は「lstd_rd の yahoo.co.jp」まで。